塩谷歯科医院

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むし歯の予防に使われるフッ素

フッ化物について

フッ素は非常に反応性が高い元素で、自然界では通常単体で存在することはありません。代わりに他の元素と結合してフッ化物として存在します。私たちの日常の飲食物(お茶、海藻、魚や野菜など)にも、多くのフッ化物が含まれています。

フッ化物は世界中でむし歯の予防に大いに貢献していますが、かつては歯科の歴史において、歯のフッ素症(斑状歯)の原因としても知られていました。山の岩石にはフッ化物が多く含まれており、それが溶け出た川の水を飲んでいた子供たちの歯に、褐色の斑点が見つかりました。しかし、これらの子供たちを調べてみると、実際にはむし歯の発生が少ないことがわかりました。

そのため、一時的にはフッ化物を体内に摂取することがむし歯の予防につながると考えられ、塩、小麦粉、錠剤、水道水などでのフッ化物摂取が推奨されました。しかし、現在では、フッ化物を含んだ歯磨剤を使用することで、常に口腔内にフッ化物が存在することがむし歯の予防に重要であり、体内への摂取は必要ないことが明らかになっています。

実際に、幼児期にフッ化物を過剰摂取すると、歯のフッ素症を引き起こし、歯の結晶がもろくなってしまうことがわかっています。また、フッ化物は塩と同様に、過剰摂取すると急性中毒を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

フッ化物は、再石灰化の促進、脱灰の抑制、結晶性の改善、細菌の代謝阻害によりむし歯を予防する働きがあります。過剰なフッ化物摂取による悪影響を排除し、フッ化物に対する正しい知識を持ち、むし歯の予防に効果的に活用しましょう。 

フッ化物でむし歯ゼロ?

フッ化物には、むし歯を予防する効果があります。では、フッ化物を使用すれば、むし歯は完全に防げるのでしょうか?

オランダで行われた興味深い研究が、この問いに答えを提供してくれます。

1953年から1971年までの間、フッ化物濃度1 ppmの水道水が供給される地域(グループ1)と、フッ化物濃度0.1 ppmの水道水が供給される地域(グループ2)で生まれ育った子供たちのエナメル質むし歯と象牙質むし歯の数を、7歳から18歳までの期間で2年ごとに調査しました。

18歳の時点で、グループ1とグループ2の地域で、エナメル質むし歯と象牙質むし歯の数を比較しました。その結果、以下のような結果が得られました。

  • エナメル質むし歯と象牙質むし歯の合計数は、グループ1とグループ2で同じでした。
  • エナメル質むし歯の割合は、グループ175%、グループ250%でした。

これからわかるように、フッ化物はむし歯の発生を完全に防ぐのではなく、むしろむし歯の進行を遅らせる効果があることが分かります。 

フッ化物で歯を強く?

以前は「フッ化物を摂取して歯を強くする」という考え方がありました。これは、フッ化物がエナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイトに作用し、フルオロアパタイトへと変化させることで、むし歯を防ぐという狙いがあったのです。

一方、フルオロアパタイトはハイドロキシアパタイトよりもむし歯になりにくいと言われています。Ogaardの研究によると、興味深い結果が得られました。

ヒトの歯(ハイドロキシアパタイト)とサメの歯(フルオロアパタイト)を、ヒトの口の中で4週間かけて意図的にむし歯にさせた後、病変の深さとミネラルの喪失量を調査しました。その結果、最も脱灰が少なかったのは、ヒトの歯+フッ化物洗口でした。つまり、フルオロアパタイトそのものがむし歯の抑制に効果的なのではなく、脱灰部分にフッ化物が存在していることが重要な要素であることがわかりました。これは、再石灰化を促進し、脱灰を抑制するフッ化物の働きによるものです。

フッ化物の4つの働き

フッ化物には、むし歯の予防にさまざまな働きがあります。

  1. 再石灰化の促進:フッ化物が脱灰されたハイドロキシアパタイトに作用することで、再石灰化が促進されます。
  2. 脱灰の抑制:フッ化物が低濃度で存在すると、ハイドロキシアパタイトの結晶に吸着し、溶解しにくい構造を作ります。これにより、脱灰が抑制されます。
  3. 結晶性の改善:再石灰化の際、フッ化物は溶解したハイドロキシアパタイトに優先的に吸着し、耐酸性のある結晶を形成します。
  4. 細菌の代謝阻害:フッ化物は細菌の糖代謝を妨げたり、細菌が酸を排泄するのを阻害する働きがあります。

フッ化物による再石灰化の効果

再石灰化の促進は、フッ化物の4つの働きの中でも特に重要です。

フッ化物の存在によって、脱灰と再石灰化の境界となる臨界pHが変化します。フッ化物が周囲に存在しない場合、ハイドロキシアパタイトの臨界pHは約5.5ですが、フッ化物が存在する場合は約4.5になります。

仮に口腔内のpH5.0になったとしましょう。フッ化物がない場合、エナメル質の臨界pH5.5を下回っているため脱灰が進行しますが、フッ化物が存在する場合は臨界pH4.5になるため再石灰化が起こります。フッ化物によって再石灰化の範囲が広がり、再石灰化が促進されます。

毎日使用する歯磨剤に含まれるフッ化物の量によって、十分なむし歯予防ができるのは、この再石灰化の効果があるからです。フッ化物の使用により、歯が脱灰している時間を短縮することができます。

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